花粉症教室

(一)花粉症とは? (二)花粉症の原因の考察    1.生活環境から見た花粉症の原因      i なぜ、急速に増加したのか      ii わたしたちの体内でどのような変化が起きたのか      iii 花粉は原因ではなく誘因    2.風、寒、湿、燥、火と花粉症~症状からの分析 (三)症例 (四)五臓の生理機能と花粉症の発生メカニズム (五)結語

(一)花粉症とは?

花粉症というのは病名ではなく、空気中に飛んだ花粉に接触することによって起こるアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎、気管支喘息など、 花粉によって引き起こされるアレルギー性疾患全てを指しています。 アレルギーとは、「正常とは異なった反応」という意味で、行き過ぎた抗原抗体反応が引き起こす症状なのです。

花粉症の三大症状

花粉が鼻の粘膜に付着してアレルギー反応を起こすと、
・突然鼻の中がかゆくなり、くしゃみを連発する。
・水のような鼻水が大量に出て止まらない。
・鼻づまりが続く。

というような症状が出ます。これが花粉症の三大症状です。

花粉症の特徴

花粉症の特徴は、毎年決まった季節になると発症し、アレルギー性鼻炎の三大症状に加えて、眼のかゆみ、涙眼、のどのかゆみなどの症状があらわれ、その花粉の飛散の終了とともに、 症状も消失することです。


アレルギー性鼻炎イコール花粉症と思い込んでいる人も多いようです。しかし、アレルギー性鼻炎は花粉よりも、 ハウスダスト、つまり、家の中のホコリやチリ をアレルゲンとする場合のほうが多いのです。ほかに、ダニの死骸やカビの胞子、 ペットの毛や羽毛など、アレルゲンは多岐にわたります。


季節に関係なく、一年中鼻がムズムズするなら、ハウスダストやカビなどで、アレルギー症状を引き起こしているアレルギー性鼻炎といえるでしょう。

(二)花粉症の原因の考察

1.生活環境からみた花粉症の原因

まず、社会生活の視点からみてみると、1955年、昭和30年ごろより、花粉症は日本経済の成長や文明の進歩とともに急速に増加しました。


つまり、物質的に豊かな生活といわれるようになって急速に増加したのです。
それまでの生活と何が変化したのでしょうか?

冷たい水分の摂取量が多くなりました。

生活が豊かになったことに加えて、自動販売機の普及などにより、お茶、コーヒー、紅茶、ジュース、炭酸飲料、スポーツドリンクやビールやワイン、チューハイなどのアルコール類が、 いつでも手に入るようになりました。


その結果、あまりのどが渇いていなくても、習慣や嗜好品として飲むようになりました。


また、自動販売機の飲み物は、季節に関係なく冷やされているので、冬でも冷たい飲み物を飲むようになりました。

食生活の変化

ⅰ) 温室栽培や冷蔵庫の普及によって、季節を問わず冬でも夏の食材が食べられるようになりました。甘い物や油物を多く食べるようになりました。


ⅱ) お菓子でも、スナック菓子など、サクッと油で揚げたものが人気となり、また、チョコレートやバターなどの油脂を多用 したお菓子が多くなりました。


これらの食生活の変化が脾の働きに著しく負担をかけて、水分代謝という脾の生理機能の衰えを引き起こし、体内に水分を停滞しやすくさせるので、 私たちの体内が、ため池やプール、湿地帯のような状態になっているのです。


これは言い換えると、あらゆる自然環境の変化への適応力の低下を引き起こしているということです。
プールの水のようにたまった状態、すなわちため池状態は、自然に流れる川に比べて、寒い日には冷やされ、暑い日には熱せられて、 暑さや寒さという自然環境に影響されやすくなります。


一日の中でも、朝と夜の温度差、また、季節の移り変わりという自然現象によっても、刻々と影響されるでしょう。 このようにして、私たちの身体は、寒さや暑さ、湿気や乾燥の影響を受けやすくなり、自然環境の変化への適応力が低下するのです。


そして、湿地帯やため池の水がだんだん濁っていくように、体内の水は停滞すると、だんだん痰のように汚れて粘くなり、長くとどまって排出しにくくなります。 また、水の性質は寒で下降するので、下半身のむくみや、冷えを引き起こします。

ため池

水の代謝が不十分な身体は、ため池やプールのような状態となってしまい、自然の影響を受けやすくなります。 そうすると、自然現象である暑さ、寒さ、風や湿気や乾燥や熱の刺激を、過敏に受けて、その風、湿、寒、熱等の性質が身体に過剰に反映されて、身体が恒性を保てなくなるのです。

流れている川

水の代謝がよい状態ということは、毎日補給され続ける身体の中の水分が、絶え間なく、全身を流れ、体外に排出され入れ替わるということです。 すなわち、さらさらと流れている川と同じように、暑さ、寒さ、風や、湿気、乾燥、熱などの自然の影響を受けにくいので、恒常性を保つことができるのです。

春に多い

春に花粉症が多く発生するのは、屋外が冷たい時、暖かい部屋にいると、部屋の内側が結露するのと同じように、体内でも水が溢れるからです。

ストレスの蓄積

社会生活のスピード化や競争社会の中で緊張が増加し、それに伴って、常にストレスが過剰な状態になっています。 精神活動の過剰や脳の興奮、過剰な緊張、ストレスは、気滞による気鬱化火、肝鬱化火、心火上炎を生み、火の特性、炎上、上昇により上半身、とくに頭顔面部が熱証となります。

部屋の機密性が高くなりました。

エアコンの普及は体内の温度調節機能の低下を引き起こし、自然環境への適応力が低下しています


結果

○ 過剰な精神活動や過激な情緒反応によって頭顔面部に熱が集まる一方で腰や下半身が冷やされ、このような身体の熱の分布の偏りは体内水分の循環を著しく低下させた。


○ ストレスやグルメ思考により内蔵機能が低下して体内水分の代謝能力が低下した。


○ 薄着や冷房のききすぎにより、腰や下半身が冷やされ腎機能が低下し水分代謝が低下した。


○ 部屋の機密性の向上により自然環境への対応力が低下した。

2.風、寒、湿、燥、火と花粉症~症状からの分析

花粉症は発病の季節からいえば春に一番多いですね。
中医学から見れば、風邪は軽く舞い上がる性質があるので、身体上部の症状としてよくあらわれます。また、体液をもらしやすくします。


くしゃみ、鼻水、涙が出る、目がかゆいという症状は風邪の引き起こす症状と一致します。 又、かゆみは通常、風としてとらえます。


むずむずして、かゆみをともない鼻汁が多いもの、涙の多いものは、湿の停滞によるものとしてとらえることができます。
風は陽証なので、風によるかゆみは熱感というか、乾燥してかゆい感じになります。

症状から見た花粉症の原因

今度は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、かゆみといった症状から、原因を分析してみましょう。


(1)くしゃみ
花粉症におけるくしゃみは、さまざまな理由で衛気の宣散が失調している病態であり、くしゃみは本来は、外邪を体内に侵入させないようにするための防衛反応であり、 宣散のひとつと考えることができます。
勢いが強く連発するくしゃみは、衛気がスムーズに流れずに、充満しているために、花粉を引き金として、過大に発散するものです。


(2)分泌物
分泌物では、鼻汁や涙は、さらさらとして大量のものは、寒証であり、湿としてとらえらることができます。 粘性のものは、湿が煮詰められたもので、化熱を意味します。


(3)鼻閉
肺気が宣散できずに鬱滞して、鬱熱となり、肺気が充満して閉ざされた鼻閉の場合、乾燥感や熱感を伴い、分泌物はあまり多くなく、透明で、やや粘性をもったものとなります。 長期にわたれば、血が見られ気血が鬱滞して、鼻閉はいっそう強まり、頑固な症状をもたらします。


鼻閉の病態としての本質は、気、血、津液が順調に巡らないことによる滞りということがいえます。 痰飲が肺竅をふさいだ場合の鼻閉は、日常的に、咽喉や気管にも痰が溜まりやすく、粘性が非常に強く、塊がみられます。


(4)かゆみ
かゆみは通常風としてとらえますが、風は陽証なので、風によるかゆみは熱感となり、乾燥してかゆい感じになります。むずむずして、かゆみをともない鼻汁が多いもの、 涙の多いものは、湿の停滞、すなわち体内水分の代謝障害によるものです。

(三)症例

初診 1999年2月15日 女性 年齢43歳  公務員


現病歴
20年来の花粉症
毎年2月から5月初旬 鼻水が水のように溢れ出す
6月7月 症状少し軽減
8月9月 症状なし
10月11月 同様の症状となります


・1時間ほどで、ハンカチが濡れてしまって使えなくなるほどで、この時期は毎日耳鼻科に通院しています。
・1年のうちの8ヶ月は、このような状態が続いています。
・減感作療法は2年ほど続けていますが、効果がなく、来院いたしました。


症状
・イライラ、怒りっぽい、よくため息をつく。
・生理前に乳房が張る、血塊がある。
・寝つきが悪く、よく夢を見る。
・よく口内炎が起こる。
・キーンという耳鳴り、耳が詰まった感じがする。
・汗はあまりかかない、水分は欲しくないが、頻尿で量も多い。
・手足が冷たくなかなか温まらない。


舌診
・暗紅色
・苔:白薄苔(やや苔が多く滑)
・舌尖:紅、紅点あり


脈診
・渋やや弦

症状の考察 症状の考察2 症状の考察3-弁証 理(病因病機)・治法・穴・手技

治療経過

・週3回の治療を行った。
・1ヶ月後 鼻水50%軽減、耳鼻科に行かなくてもよくなった。
・2ヵ月後 治療20回で鼻水90%軽減
・3ヵ月後 治療25回で全ての症状改善


以後、月2回体調管理のための治療に切り替え継続。
1年後、2ヶ月ほど治療が中断したとき鼻水あり、再来院したが1回の治療で治癒。その後2年半、現在にいたるまで、症状はまったくありません。

寒熱を問う

いらいらしたり、怒りっぽい、寝つきが悪く夢を見る、口内炎などをみると、肝鬱化火、心火上炎による症状で、寒熱を問えば、熱証ととらえられます。
しかし、肝鬱化火と心火上炎は結果として心腎不交の証を引き起こしました。


しかし、心腎不交の長期化は、心火が腎水を温められないので、腎陽不足、すなわち腎陽虚をもたらしました。腎陽虚による水湿不化であります。
頻尿で量が多く、手足がなかなか温まらない、舌診において、薄白苔、滑苔は、明らかに寒証であり、主訴を花粉症として寒熱を問えば、本質は寒証であります。

(四)五臓の生理機能と花粉症の発生メカニズム

これまで述べてきたことをまとめてみると、花粉症の発症は、全て下図のように、五臓の生理機能と関係しています。 この図は、五臓の生理機能と発生メカニズムを総合したものです。
つまり、全ての花粉症の原因及び発生メカニズムがまとめられたものです。

花粉症の発生メカニズム

五臓の生理と花粉症の発生機序の図

(五)結語

花粉症や、アレルギー症状を引き起こす原因は、このようにさまざまな臓腑の生理機能の失調が関わっています。
治療をする上で、大切なことは、臨床ではひとつの臓腑の生理機能の失調によることはまれであるということです。


すなわち、病には、さまざまな臓腑の生理機能が関連しているということです。
どの臓腑の生理機能の失調によるものかを分析し、随伴症状に惑わされず主訴としての弁証において、寒熱を正しくとらえること、標、本としての治療法則を立てることが最も大切です 。

七情と花粉症の発生メカニズムの図